
武蔵常盤
2026.8.13
第五回 AI時代、エンジニアは「自分を経営する」。これから価値を持つエンジニアとは

武蔵常盤株式会社は、2026年8月で創業10周年を迎えました。
創業10周年を機に、私たちがどのように仕事をしてきたのか、そして、これからどのような会社でありたいのかを書いています。
第1回では、オンプレミスからクラウド、Salesforce、そしてAIへと変化してきた10年間。
第2回では、創業以来の黒字経営を支えてきた「始末した経営」。
第3回では、SESのシステム開発現場で身につけてきた「現場力」。
第4回では、失敗を経験する中で気づいた「できること」と「やるべきこと」の違いについて書きました。
第5回は、
「これからのエンジニア」
について考えてみたいと思います。
生成AIが急速に発展しています。
プログラムを書く。
調査する。
設計する。
テストケースを考える。
ドキュメントを作る。
これまでITエンジニアが時間をかけて行ってきた仕事を、AIが驚くほどの速さで支援するようになりました。
では、
これからエンジニアの価値はどこにあるのでしょうか。
私は、その答えの一つが、
「自分を経営すること」
だと考えています。
「AIより価値のある人間」になる必要はない
生成AIが急速に発展すると、
「AIに仕事を奪われる」
「AIより優秀でなければならない」
という話が出てきます。
しかし私は、
AI単体より価値のある人間になる必要はない
と思っています。
計算機より速く計算する必要がないのと同じです。
検索エンジンより多くのWebページを記憶する必要もありません。
AIが人間より速くコードを書くのであれば、それを使えばいい。
AIが短時間で大量の情報を整理できるのであれば、それを使えばいい。
大切なのは、
AIに勝つことではなく、AIを使って成果を出せること。
だと思います。
1年前、AIを十分に使わなかったプロジェクト
私自身、AIを使った開発について考え方が大きく変わるきっかけになったプロジェクトがあります。
1年ほど前、私は初めてCursorを使って開発を行いました。
しかし、そのプロジェクトでは、AIの活用には比較的消極的でした。
要件定義段階の調査。
資料作成。
設計。
仕様の検討。
こうした作業の多くは、従来通り人間が行っていました。
AIを使ったとしても、
「この一覧を集計して」
「この情報を整理して」
といった補助的な使い方が中心でした。
つまり、
人間が考えたものをAIに処理させる
という使い方です。
当時としては、それでも十分便利でした。
しかし現在振り返ると、
もっと早い段階からAIと一緒に考えることができたのではないか
と思います。
AIにコードを書かせるだけではない
AI開発というと、
「AIにプログラムを書かせる」
というイメージが強いかもしれません。
もちろん、それも大きな変化です。
しかし、私はAIによる本当の変化は、もっと上流にあると考えています。
例えば、システムを作る前に、
「この要件に矛盾はないか」
「この業務フローで問題が起きそうなところはどこか」
「この要件を実現する方法には何があるか」
「既存の標準機能やサービスで実現できないか」
「この設計にはどんなリスクがあるか」
とAIに問いかける。
人間が一人で考えてからAIに作業を渡すのではなく、
計画や調査の段階から、人間とAIが一緒に考える。
ここに大きな可能性があります。
人間の「曖昧さ」は強みでもあり、弱点でもある
人間には、現在のAIとは異なる大きな特徴があります。
それは、
曖昧でも動けること
です。
「だいたいこんな感じ」
「そこは後で考えよう」
「いつもの感じで」
それでも人間同士なら、相手の意図を想像して仕事を進めることができます。
これは人間の非常に優れた能力です。
しかし、システム開発では、この曖昧さが問題になることがあります。
人によって解釈が違う。
担当者によって認識が違う。
仕様書には書いていないが、誰かの頭の中にはある。
そして実装した後になって、
「そういう意味ではなかった」
となる。
AIを活用して開発するなら、これまで以上に、
曖昧なものを明確にする力
が重要になると思います。
AIに良い仕事をさせるには、人間が考えなければならない
AIは非常に便利です。
しかし、
「いい感じにシステムを作って」
と指示すれば、必ず良いシステムが完成するわけではありません。
何を作るのか。
なぜ作るのか。
誰が使うのか。
どんな制約があるのか。
何を正しい状態とするのか。
どこまでAIに任せるのか。
何を人間が確認するのか。
これらを整理する必要があります。
つまり、
AIが進歩すれば、人間は考えなくてよくなる
のではありません。
むしろ、
人間は「何を考えるべきなのか」を、より強く求められるようになる。
私はそう考えています。
「プログラムを書ける」がゴールではなくなる
これまでITエンジニアの価値を説明するとき、
「Javaが書けます」
「Pythonが書けます」
「Apexが書けます」
という言い方がよく使われてきました。
もちろん、プログラミングの知識はこれからも重要です。
AIが生成したコードが正しいのか判断するためにも、基礎知識は必要です。
しかし、
「コードを書けること」そのものの希少性は、確実に下がっていく
と考えています。
これから問われるのは、
そのコードで何を実現するのか。
です。
AIが書いたコードは、誰が責任を持つのか
AIがコードを書いてくれる。
これは非常に便利です。
しかし、AIが作ったコードだからといって、AIがお客様に責任を負ってくれるわけではありません。
本番環境で障害が起きた。
データが壊れた。
セキュリティ上の問題があった。
要件を満たしていなかった。
そのとき、
「AIがそう書いたので」
では済みません。
AIが生成したものを理解する。
レビューする。
テストする。
必要なら修正する。
そして、
最終的な成果物に人間が責任を持つ。
AI時代になればなるほど、この姿勢は重要になります。
経験者の価値は、むしろ高くなる部分がある
「AIがコードを書けるなら、経験はいらなくなる」
という考え方もあります。
私は、必ずしもそうは思いません。
例えばAIが、
「この設計が最適です」
と提案したとします。
経験の少ない人は、
「AIが言っているから正しいのだろう」
と思ってしまうかもしれません。
しかし経験のあるエンジニアなら、
「理屈としては正しいけれど、この現場では運用できない」
「この方式は以前トラブルになった」
「この顧客の業務なら別の方法がよい」
と判断できることがあります。
これは、第3回で書いた、
「現場力」
そのものです。
AIが一般的になればなるほど、
AIの回答を現実の現場に当てはめて判断できる経験
は、むしろ重要になると考えています。
エンジニアは「自分を経営する」
ここで、第2回で書いた「始末した経営」に戻ります。
会社を経営するときには、
何にお金を使うのか。
何に時間を使うのか。
何を研究するのか。
何をやらないのか。
限られた経営資源を、どこへ配分するのかを考えます。
エンジニアも同じです。
自分が持っている時間は有限です。
だから、
自分の時間を何に投資するのか
を考えなければなりません。
Javaを深めるのか。
AWSを学ぶのか。
Salesforceを学ぶのか。
AIを学ぶのか。
マネジメントへ進むのか。
顧客との折衝能力を磨くのか。
すべてを同じ深さで学ぶことはできません。
だから、自分で判断する。
これが、
「自分を経営する」
ということです。
会社任せのキャリアにしない
会社員であれば、会社が仕事を用意してくれます。
SESであれば、営業が案件を紹介してくれることもあります。
しかし、
紹介された仕事をしているだけで、自分のキャリアが自動的に完成するわけではありません。
今の案件で何を学ぶのか。
この経験を次にどうつなげるのか。
市場はどこへ向かっているのか。
自分は5年後、何ができる人になりたいのか。
これは、自分自身でも考えなければなりません。
私はSESでさまざまな現場を経験してきましたが、
「次に何が必要になるのか」
を考えて学んできたことが、その後のキャリアにつながりました。
昔の経験を捨てる必要はない
新しい技術が登場すると、
「これまで勉強してきたものが無駄になるのではないか」
と不安になることがあります。
しかし、私はそうは考えていません。
オンプレミスを経験しているから、クラウドの価値が分かる。
Javaでシステムを作ってきたから、ローコード・ノーコードの利点と限界が分かる。
データベースを理解しているから、新しいプラットフォームでもデータモデルを考えられる。
従来の開発を経験しているから、AIによる開発の何が変わったのかが分かる。
経験は、
次の技術へ進むための土台
になります。
重要なのは、
過去の経験にしがみつくことではなく、
過去の経験を使って、次へ進むこと。
です。
AIを使わないことも、AIに丸投げすることも違う
AI時代には、二つの極端な考え方が出てくると思います。
一つは、
「AIは信用できないから使わない」
という考え方。
もう一つは、
「全部AIにやらせればいい」
という考え方です。
私は、どちらも違うと思っています。
AIが得意なことはAIに任せる。
人間が判断すべきことは人間が判断する。
AIの成果物は人間がレビューする。
そして、その責任は人間が持つ。
AIを道具として使いこなす。
それが現実的な姿だと思います。
私たちが一緒に働きたい人
だから、武蔵常盤株式会社が一緒に働きたいのは、
「今、何ができるか」だけで自分の価値を決めない人
です。
現在のスキルはもちろん大切です。
しかし、IT業界では技術が変わります。
私たち自身も、
オンプレミスからクラウドへ。
クラウドからSalesforceへ。
そして現在は、AIを活用した開発方法についても研究しています。
これから一緒に働く人にも、
「今までの経験を土台にして、次へ進める人」
であってほしいと思っています。
自分のキャリアにも「始末」を
第2回で、
始末とは、お金を使わないことではなく、限られた資源を本当に必要なところへ使うこと
と書きました。
これはキャリアにも当てはまります。
時間は有限です。
だから、何でも勉強することはできません。
流行している技術を全部追いかけることもできません。
自分は何を目指すのか。
そのために何を学ぶのか。
何を今は学ばないのか。
どの経験を次へつなげるのか。
自分のキャリアにも「始末」が必要です。
そして、その判断を他人任せにしない。
自分自身を経営する。
AI時代は、エンジニアにとって面白い
AIによって、エンジニアの仕事は変わります。
それは間違いないでしょう。
しかし私は、この変化を悲観的には見ていません。
むしろ、
非常に面白い時代が来た
と思っています。
これまで何時間もかかっていた作業をAIが短時間で行ってくれる。
一人では調べきれなかったことを一緒に調べてくれる。
設計の壁打ち相手になる。
コードも書いてくれる。
そうなれば、人間はもっと、
「何を作るのか」
「なぜ作るのか」
「お客様にどんな価値を提供するのか」
という、本質的な部分に時間を使えるようになります。
AIによってエンジニアが不要になるのではなく、
AIによって、エンジニアがより本質的な仕事へ進める。
武蔵常盤株式会社は、そんな未来を目指しています。
次の10年を、一緒につくる
10年前、現在のIT業界を正確に予想することはできませんでした。
10年後の2036年も、きっと同じです。
今は想像できない技術が登場しているかもしれません。
システム開発の方法そのものも変わっているでしょう。
だからこそ、
一つの技術に安住するのではなく、変化できる人でありたい。
そして、
技術そのものではなく、その技術を使って価値を生み出せる人でありたい。
武蔵常盤株式会社も同じです。
私たちは完成された会社ではありません。
AI時代のシステム開発がどのような姿になるのかを研究しながら、自分たち自身も変化していきます。
過去の経験を大切にする。
しかし、過去の成功方法には固執しない。
AIを恐れない。
AIに丸投げもしない。
そして、お客様の目標達成に寄与する。
次の10年を、一緒につくる。
そんなエンジニアと出会えることを楽しみにしています。